大判例

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東京高等裁判所 昭和36年(行ナ)136号 判決

一 原告の請求の原因一、二および三の(一)、(二)の事実(特許庁における手続の経緯、本件審決の理由、本願発明の要旨および本願発明と第一引例との関係)は、当事者間に争いがない。

したがつて、本件の争点は、第一引例により本件特許出願前に公知の技術(本願発明の特許請求の範囲の項中、その前段すなわち、冒頭から「……金張線金を製造する場合」までの部分に記載された技術)において、「金管の内空内に台金を挿入したもの」(この金管が台金よりやや短いものであることは、原告の主張自体によつて明らかである。)のかわりに、「台金よりやや短い一枚の矩形の金板を台金に巻付けたもの」を用いる本願の金張線金製造方法が、はたして特許要件を具備するかどうかに存する。

二 成立に争いのない甲第二号証の九および同第四号証の一によれば、第一引例の方法と本願発明の方法との間には、原告の請求の原因三の(三)に記載のような構成および作用効果の差異のあることが認められるが、一方、成立に争いのない甲第四号証の二によれば、第二引例には、芯線にアルミニウム板を巻付けたものを加熱して圧延することにより、金鑞を用いないで芯線の周りにアルミニウムを確実に密着被覆させる被覆電線の製造方法が記載されていることを認めることができる。そして、このように、芯金(台金)に金(属)板を巻付けたものを用いる場合は、金板からまず金管を(前掲甲第二号証の九により認められる従来法により)製造してその内空内に台金を挿入したものを用いる場合に比して、工程が簡単で落金や減耗がすくなく、また、張金比率の決定が容易かつ正確であるという効果を奏するであろうことは、当業者の容易に予測しうる範囲を出ないものというべきである。

したがつて、本件審決が、前記公知の技術に前記のような改良を施し、その結果原告主張の作用効果を奏するにとどまる本願発明をもつて、第一、第二の両引例から容易に推考しうるものとした判断は正当であり、そこに原告主張の違法はないといわなければならない(本件審決の引用する第三引例は、本願に対する拒絶引例として適切なものではないが、その点は右の結論に影響がない。)。

三 なお、原告が請求の原因三の(四)において審決の誤りとして指摘する点について言及するならば、まず、本願発明が、接着剤(半田鑞など)を使用せずに芯金に板状の金属を巻付け接着することを一の主眼点とすることは、原告が本願発明の要旨として主張するところ自体からきわめて明らかであつて、その点の審決の判断を攻撃する原告の主張はとうてい採用できず、また、第二引例の技術も、台金に金属板を被覆させて圧延伸線する線金加工に関する点で、本願発明と同一技術分野に属するというべきであり、その技術分野に属する者にとつて前記本願の作用効果の予測が容易であつたと認めうべきこと前示のとおりであるから、この点に関する原告主張も採用できない(第二引例の明細書にそのような作用効果の記載がないことや、審決がこれを引用した趣旨以外の工程の差異に基づいて本願発明との作用効果上の差異を論じても意味がない。)。

四 以上のとおりであるから、その主張の点に判断の誤りがあることを理由に本件審決の取消しを求める原告の請求は、失当として棄却する。

〔編註その一〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

本願発明の要旨は、昭和三六年六月二九日差出しの訂正明細書中特許請求の範囲の項に示されているとおり、「金管の内空内に台金を挿入したものを金属製の管型内に両端を露出せしめて嵌入し、其の両端面を抑盤を介して高圧力を以て挾圧を加えつゝ加熱することにより金鑞を用いないで一体に張着けた後、管型内より取出して被加工物を転子圧延し、更にダイス伸延其の他の手段を以て伸線する金張線金を製造する場合に於て、台金に之より稍短かい一枚の矩形の金板を台金に捲付けたものを管型内に密挿して張着けることを特徴とする金張線金製造方法の改良」にある。

〔編註その二〕 本件の審決理由は左のとおりである。

本願の発明は、昭和二九年一二月二一日の出願であつて、その要旨は、当審に於て差出した明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された金張線金製造方法にあると認められるが、これと当審の引用例である特許第一二二五七五号明細書に記載の金張線金製造方法(甲)とを比べてみると、本願の発明は台金に之より稍短かい一枚の矩形の金板を捲付けたものを管型内に密挿する工程を有するのに対して前記(甲)の方法は台金を之より稍短かい金管に挿入したものを管型内に密挿する工程(乙)を有する点が構成上相違するものと認められる。

しかし本出願前国内に頒布された刊行物特許第一一八〇三七号明細書または特許第一二五四三五号明細書には芯金に板状の金属を接着剤を使用することなく捲付けたものを圧延引抜伸延する工程(丙)が記載されている。

そして本願の発明に於ては矩形の金板を台金より短かくしているが、前記(乙)の工程に於ても金管を台金より短かくしている以上このような点には発明の存在は認められない。

また本願の発明は金板に落金を生じないから台金に対する正確な金張比率に於て之を表示できる作用効果を奏するものであることは充分に認められる。しかし前記(丙)の工程によれば芯金に棒付けた板状の金属には落金は生じないから前記作用効果は当然予測できる程度のことにすぎない。

なお抗告審判請求人は前記(丙)の工程は心線と被層との密着を要するものではない旨主張しているが、前記特許第一一八〇三七号明細書には心線とアルミニユーム板とを緊密に結合することが記載してある以上前記主張は採用できない。

してみれば本願の発明は前記(甲)の方法の前記(乙)の工程の代りに前記(丙)の工程を転用したものに比べて構成上に於ても作用効果上に於ても格別相違するものとは認められない。

従つて本願の発明は旧特許法第一条の発明と認めることができない。

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